フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品は、今日までどのように伝えられてきたのでしょうか。同展は、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点を当てます。
フィンセントの画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオは兄の死の半年後に生涯を閉じ、テオの妻ヨーが膨大なコレクションを管理することとなります。ヨーは義兄の作品を世に出すことに人生を捧げ、作品を展覧会に貸し出し、販売し、膨大な手紙を整理して出版するなど、画家として正しく評価されるよう奔走しました。テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは、コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、美術館の開館に尽力します。人びとの心を癒す絵画に憧れ、100年後の人びとにも自らの絵が見られることを期待した画家の夢も、数々の作品とともにこうして今日まで引き継がれてきました。
同展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの貴重な手紙4通なども展示します。現在のファン・ゴッホ美術館の活動も紹介しながら、本展をとおして、家族の受け継いできた画家の作品と夢を、さらに後世へと伝えてゆきます。
【同展のみどころ】
1. ファン・ゴッホ家のコレクションに焦点を当てた日本初の展覧会
2. 30点以上のファン・ゴッホ作品で初期から晩年までの画業をたどる
3. ファン・ゴッホが集めた作品や、初来日となるファン・ゴッホの手紙4通を展示
第1章 ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ

ファン・ゴッホ美術館 外観 2015年撮影
同展でご紹介するファン・ゴッホ家のコレクションの歴史は、フィンセント・ ファン・ゴッホの死後、その作品の大半を弟テオが受け継いだところから始まります。本章では、コレクションを継承し、フィンセントの作品を世界へ広めることに貢献した3人の家族を紹介します。
第2章 フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション
兄弟のコレクションは、ふたりが生きた時代の雰囲気を伝えてくれるとともに、フィンセントの芸術を理解する大きな手がかりとなります。フィンセントとテオはともに十代半ばから画廊で働き始めていて、手頃な価格のグラフィック・アートは若いころから身近なものでした。彼らは版画(オリジナル、複製含む)を買い、ときに贈り合います。画家になる決意をしたフィンセントは、特にフランスやイギリスの雑誌に掲載された挿絵から大きな影響を受けました。
パリでは同時代の美術も収集します。フィンセントが自らの作品と交換で手に入れた作 品は、このとき彼が画家仲間から得ていた評価を示すものでもあります。浮世絵を熱心に購入したのは主にフィンセントで、芸術的な刺激を受けるだけでなく、すでに値が上がっていた印象派の主要画家の作品を、これらと交換で何とか手に入れようと意図したものでもありました。

(左上)エルネスト・クォスト 《タチアオイの咲く庭》 1886-90年 油彩、板 45.5×55cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(右上)ポール・ゴーガン 《雪のパリ》 1894年 油彩、カンヴァス 72×88cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(下)三代歌川豊国(歌川国貞) 《花源氏夜の俤》 1861年(文久元)
大判錦絵三枚続 各38×25cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
第3章 フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描
フィンセント・ファン・ゴッホが画家になる決意をしたのは 比較的遅く、1880年、27歳のときでした。最初の3年間は 主にハーグで素描の腕を磨き、その後ニューネンで油彩画に取り組みます。1886年にパリに出ると、自らの表現が時代遅れであることに気づき、新しい筆づかいと色彩表現を取り入れ、独自の様式を生み出していきました。18 88年2月に南仏に移り、アルルで1年3ヵ月、サン=レミ=ド=プロヴァンスで1年を過ごし、自らの表現様式を確立しました。1890年5月にパリ近郊のオーヴェール=シュル=オワーズ へ移ります。新しい芸術の可能性を試み続けていましたが、自らの胸部をピストルで撃ち、7月29日に37歳で息を引き取ります。わずか10年という短い画業で驚くほどの数の作品を制作しました。
ファン・ゴッホ家が受け継いできた200点を超える絵画、500点以上の素描・版画は、 現在ファン・ゴッホ美術館に保管され、世界最大のファン・ゴッホ・コレクションとなっています。

(左)フィンセント・ファン・ゴッホ《女性の顔》 1885年4月 油彩、カンヴァス 43.2×30cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(中央)フィンセント・ファン・ゴッホ 《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》 1886年8-9月 油彩、カンヴァス
46.5×38.4cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(右)フィンセント・ファン・ゴッホ《浜辺の漁船、サント=マリー=ド=ラ=メールにて》 1888年6月 油彩、カンヴァス 65×81.5cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

フィンセント・ファン・ゴッホ 《種まく人》 1888年11月 油彩、カンヴァス 32.5×40.3cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

フィンセント・ファン・ゴッホ 《オリーブ園》 1889年11月 油彩、カンヴァス 73.2×92.2cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

(左)フィンセント・ファン・ゴッホ 《羊毛を刈る人(ミレーによる)》 1889年9月 油彩、カンヴァス
43.6×29.5cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(右)フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦の穂》 1890年6月 油彩、カンヴァス 64×48cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
第4章 ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが売却した絵画
ヨーはテオと結婚する前には特に美術に縁があったわけではありませんでしたが、パリでテオと暮らしながら、しだいにファン・ゴッホをはじめとする近現代美術に関する知識を 身につけました。テオから膨大な作品を受け継いだのちには、個人収集家や美術館の世界、美術取引の仕組みについても精通してゆきますヨーが定期的に作品を売却したのは、親子が生計を立てるためでもありましたが、フィンセント・ ファン・ゴッホの評価を確 立するという大きな目的のためでもありました。こうしたヨーの尽力を明らかにするのが 、テオとヨーの会計簿です。テオの死後には作品の売却についても記されるようになり、ヨーがどの作品をいつ誰にいくらで売却したのか、生々しい記録が残されました。会計簿の調査・研究は進み、記載されたもののうち、170点以上の絵画と44点の紙作品が特定されています。
第5章 コレクションの充実 作品収集
1973年、ファン・ゴッホ美術館は主にフィンセン トファン・ゴッホ財団のコレクション を展示する美術館として開館しました。ファン・ゴッホ作品と家族に受け継がれてきたほかの画家たちの作品を中心としながら、今日までにそのコレクションは少しずつ拡充されてきました。1980年代後半から1990年代前半にかけては、寄付や寄贈の恩恵を大いに受 け、ときにはファン・ゴッホ作品が加わることもありました。この時期に潤沢とはいえない予算を使って購入されたのは、ファン・ゴッホと関連のあるバルビゾン派やハーグ派、象徴主義の作品です。また、1990年代の終わり頃からは版画やポスターなどの紙作品の収集にも力を入れます。このコレクションはいまや世界屈指の質を誇るものとなりました。さらに収益が美術館にも分配される宝くじができると、これまで購入が難しかった作品が購入できるようになり、印象派やポスト印象派の作品をはじめ重要な作品が加わりました。

「傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」
1882年9月23日頃 ファン・ゴッホ美術館、
アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) (purchased with support from the Mondriaan Fund, the Ministry of Education, Culture and Science, the VSBfonds and the Cultuurfonds)
■展覧会名: ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
■会期:9月12日(金)~12月21日(日)
■会場:東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
■開室時間:9時30分〜17時30分、金曜日は20時まで(入室は閉室の30分前まで)
■休室日: 月曜日、9月16日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
※ただし9月15日(月・祝)、9月22日(月)、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開室
■観覧料金:
[前売券]一般 2,100円/大学生・専門学校生 1,100円/65歳以上 1,400円
[通常券]一般 2,300円/大学生・専門学校生 1,300円/65歳以上 1,600円
◎前売券は2025年7月25日(金)~9月11日(金)までの販売。
※大学生・専門学校生は、9月平日のみ無料。 ※18歳以下、高校生以下は無料。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
※18歳以下、高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。
※土日・祝日および12月16日(火)以降は日時指定予約制(当日空きがあれば入場可)
※12月12日(金)までの平日にご来場の場合は日時指定予約は不要です。
※各種お手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)、18歳以下、高校生以下の方は、日時指定予約は不要です。
※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
■主催: 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、 NHK、NHKプロモーション、 東京新聞
■協賛: NISSHA
■後援: オランダ王国大使館
■協力: KLMオランダ航空
■問い合わせ:TEL.050-5541-8600 (ハローダイヤル)
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★申込み締切 9/5(金)12:00まで
※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。

更新日:2025年8月20日(水)