
2024年1月1日の能登半島地震から2年が経った。能登の復興は進んでいるとはまだ言い難い。その一方で、能登へ思いを寄せる人たちが能登を訪れ、それぞれに活動し始めている。静かだった能登 に多様な人たちが集まり、能登の人たちとともに誰も想像していなかった未来へ向かおうとしている。 本展には、能登の「これから」に希望を抱き、一歩ずつ復興へと進んでいくことへの願いを込めた。
本展を構成するのは、石川に暮らす10組に、石川出身の前本彰子を加えた11組のアーティストたちである。いずれも能登で活動する作家、能登への思いを作品にする作家たちである。なかには自宅が倒壊し、住む家を失った作家もいる。展示する作品のなかには、被災し、もとの形ではなくなった作品もある。しかし、アーティストたちはそこに意味を見出し、新たな作品として再構築する。そうしたアーティストたちの思考と行動が、能登の復興への大きな力となるのではないだろうか。能登への思いをつくること、そして多くの方に本展を見ていただき、感じることへと繋いでいきたい。それぞれのアーティストたちとともに、能登復興へ思いを改めて寄せていただけたら嬉しい。
(キュレーター 高橋律子)
| 【出品作家】 石川幸史、仮( )-karikakko-、金沢 21 世紀歌劇団+VOX OF JOY、金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム[スズプロ] 、高橋治希、髙橋稜、前本彰子、眞壁陸二、モンデンエミコ、山本優美、山本基 |
◆能登のこれからを考える5つのキーワード 「芽吹く」「重ねる」「変わる」「祈る」「歩む」
同展は5つのキーワード、「芽吹く」「重ねる」「変わる」「祈る」「歩む」から構成します。この5つのキーワードに沿う形で、能登半島地震からゆるやかに進む復興の歩みのなかで、アーティストたちがどのように思考し、作品にしてきたかを紹介していきます。
自然とともに
地震で能登の風景は一変しました。けれども、震災後の春を迎えた能登では、いつもの年と変わらず、花が芽吹き、虫たちが飛び回っていました。高橋治希の新作は、能登の里山里海に咲く草花を癒しとともに描きだします。写真家、石川幸史は、震災以前から能登の海岸を撮影してきましたが、震災後も積極的に能登の海岸を撮影しています。大きな自然の営みのなかにある私たちの存在を浮き彫りにします。地震があっても変わらない能登があり、ささやかな日常の積み重ねの先に創造的復興があり、誰もが能登のために思いを寄せることができる。能登の自然とともにある日常。それこそが力になると考えています。

(左)高橋治希《伏流水の庭》部分(2023年)
(右)石川幸史 シリーズ「汀の光、時の轍 能登」より(2024年)
被災した作品、被災からの展開
奥能登地震では、作品も被災しています。本展では、金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム [スズプロ]《奥能登曼荼羅》(2017年)と山本優美《わたしのひふはおもたい》(2021年)の被災した2つの作品を展示します。《奥能登曼荼羅》は、当時の制作メンバーが立ち上がり、作品の修復と再設 置に向けたプロジェクトとして動き出しました。能登に暮らす人々から聞き取った物語を描いた作品に、地震以降の物語が描き加えられるかもしれません。山本優美《わたしのひふはおもたい》は、揺れで倒れ、3つに分かれてしまったけれども、横たわり、見えなかった「ひふ」の内側がさらされることで、自分だけでは抗うことのできない多くの感情や思考を滲ませる作品となっています。被害を伝えるための展示ではなく、地震を経て、作品にはさらに思いが込められ、複雑で豊かなメッセージを伝えてくれます。被災した作品を単に修復するのではなく、作品の意義を見つめながら、新たな作品としての使命を与えるアーティストの制作は、わたしたちに勇気を与えてくれるに違いありません。

(左)金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム[スズプロ]《奥能登曼荼羅》部分(2017年)
(右)山本優美《わたしのひふはおもたい》(2021年)
日常のなかにある震災
地震はある日突然起こりました。その前にも、その後にも日常があり、連続する日々のなかに地震があります。地震の日を境に能登の日常は一変し、その一方で、能登から遠く離れて暮らす人たちの日常からは薄れつつあるのかもしれません。けれども、アーティストの作品が、地震は日常の一片で あることを思い出させてくれます。髙橋稜《あの日みたもの》(2024年)は石川から離れていた日に起きた地震をテレビのニュースで知ったときの思いを作品化し、記憶として刻み込んでいきます。仮( )- karikakko- は、珠洲で被災し、自宅を失いながらも、能登の人たちとともに復興へ歩んでいく力強い日々が作品という形で綴られていきます。モンデンエミコは金沢での生活に追われながらも、時に能登に思いを馳せ、時に能登に足を運び、能登の人たちと対話する、リアルな毎日が刺繍日記という形で綴られています。アーティストたちのそれぞれの日常にある能登を作品という形で触れることで、その作品を見る私たちの日常にもまた能登が加わっていくはずです。復興の日々は、日常として積み 重ねられながら、一歩一歩進んでいきます。この展覧会を見てくださる方の日常にも、能登への思い を重ねていただけたらと願っています。

(左)髙橋稜《あの日みたもの》(2024年)
(中央)仮( )-karikakko-《仮(葬)-kari(sou)-》(2024年)
(右)モンデンエミコ「刺繍日記」より(2025年)
能登への思いを作品にする
石川県出身の前本彰子は、東京で能登の地震のニュースを知った1時間後には、祈りを込めてこの《青の天使》(2024年)を制作していたと言います。ミュージカ「HOME~Grace for All~」(2025年)は、能登の方々の言葉をつなぎ、多くのアーティストや地域の方々が協働して生まれた作品です。いてもたってもいられない能登への思いをアーティストたちは作品にしています。山本基が奥能登国 際芸術祭のために制作した《記憶への回廊》は倒壊し、塩の塔は瓦礫と化してしまいましたが、有志の方々がその塩を用いたアクセサリー作りのワークショップを各地で行うなど新たな展開を見せています。本展では、《記憶への回廊》(2020年-)と連なる作品を展示するとともに、被災した黒瓦に描いた作品等で構成します。震災後から能登への思いを作品に重ねてきた眞壁陸二は、奥能登国際芸術祭 出品作《青い舟小屋》(2017 年)を再構成し展示します。

(左上)山本基《時の積層》(2025年)(右上)眞壁陸二《青い舟小屋》(2017年)
(左下)金沢21世紀歌劇団+VOX OF JOY ミュージカル「HOME~Grace for All~」より(2025年)
(右下)前本彰子《青の天使》(2024年)
■展覧会名/能登と artists 能登とともにある、アーティストの思考と行動
■会期/3月7日(土)〜4月2日(木)※会期中無休
■会場/そごう美術館(横浜駅東口・そごう横浜店6階)
■住所/神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
■開館時間/午前10時~午後8時(入館は閉館の30分前まで)
■入館料/一般 1,400円、大学・高校生 1,200円、中学生以下無料
※障がい者手帳各種をお持ちの方、および同伴者1名入館無料。
※3月20日(金・祝)、21日(土)、22日(日)の3日間のみ[クラブ・オン/ミレニアムカード、クラブ・オン/ミレニアム アプリ]をご提示の方は無料でご入館いただけます。(特別無料ご招待3DAYS)
■問合せ/045-465-5515[美術館直通]
■主催/そごう美術館、神奈川新聞社
■後援/石川県、珠洲市教育委員会、北國新聞社、神奈川県教育委員会、横浜市教育委員会、
tvk(テレビ神奈川)、FM ヨコハマ
■特別協力/金沢美術工芸大学、奥能登国際芸術祭実行委員会、NPO ひいなアクション
■協賛/そごう・西武
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★申込み締切3/19(木)12:00まで
※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
更新日:2026年3月4日(水)







