バレエとともに歩んだ70年
毎日一年生の気持ちで、新鮮に稽古ができることがとても幸せ
昨年、舞踊歴70周年を迎え、今もなお踊り続けている森下洋子さん。今や世界各国で日本人が活躍し、バレエ大国となった日本ですが、その先駆者として道を切り拓き、舞台で輝き続ける秘訣、その原動力についてお話ししていただきました。
バレエとの出会いと両親への感謝
森下さんがバレエと出会ったのは3歳の頃。身体が弱かったため、医師から何か運動をと勧められ、自宅前の幼稚園でバレエを習ったことに始まります。そして小学校一年生の時、広島に来た東京のバレエ学校の少女たちが踊る『4羽の白鳥』を見て、私もあんな風に踊りたいと思い、東京のバレエ学校で稽古をすることに。当時広島から東京は、特急あさかぜで12時間という長旅。
「母は私が東京に着き、東京のバレエの先生が送る『ヨーコ、ブジツイタ』の電報を受け取るまで、一睡もできなかったと後から聞きました」と語ります。そして12歳の時に、バレエを一生の仕事にすると決意し、単身上京。「両親は『バレエにあげた子』と思い、お金は出すけれど口は出さないと決めました。だから決断はすべて事後報告。親の勇気に深く感謝しています」とご両親の深い愛情に感謝の念が絶えません。
コロナ禍の世の中こそ舞台芸術が希望を届ける
今でもバレエから離れる日は1日もなく、毎日5、6時間レッスンを行い、休日にも家でストレッチをするという森下さん。「毎日一年生の気持ちで、新鮮に稽古ができることがとても幸せです」と語りますが、コロナ禍をどのように乗り越えたのでしょうか。
「緊急事態宣言が発令され、バレエ団での稽古ができなくなりましたが、すぐにオンラインレッスンに切り替えました。バレエ学校の生徒ともオンラインで連絡を取り合い、より絆が深くなったと思います。私自身は、このような時間もチャンスと捉え、自分の身体と向き合い、調整する時間となりました」と逆境もプラスに変えていくパワーが伝わります。また、コロナ禍におけるバレエをはじめとする舞台芸術の意義について伺うと、
「古典芸術は人々の心の危機を救うもの。このような時だからこそバレエだけでなく全ての舞台芸術は、皆さんの心に希望をお届けする使命があると思っています。感染拡大で延期や中止を余儀なくされることもありましたが、めげず、くじけず、へこたれず、歩みを続けていきたいです」と力強く答えていただきました。
これからも平和への祈りを込めて踊り続ける
被爆の記憶が残る広島に生まれ、バレエに出会った森下さんは平和への祈りを込めて踊り続けることが一つの使命であると言います。また、「バレエを通じて、多くの方に夢や希望、あたたかい愛をお届けしたい」という強い思いも。
団長をつとめる松山バレエ団については、「松山バレエ団は、『芸術は人々の幸せのためにある』という思いを持って活動を行っています。皆でベクトルを合わせて作品を届ける姿勢、そこから生まれる〝あたたかい舞台〟〝心深い感動〟が松山バレエ団の魅力」と教えてくれました。
プラス思考で人生は豊かになる
レディ東京の読者でも取り入れられるイキイキと生きる秘訣を伺うと「私の祖母は、広島で被爆し、左半身に大きなやけどを負いましたが、一切愚痴を聞いたことがありません。くっついた親指を離す手術が上手くいかなかった時も『親指一本使えれば洗濯ができる』と笑っていました。命に感謝し前向きに生きる姿勢に私も大きな影響を受けました。ものごとはマイナスにとらえるか、プラスにとらえるかで大きく変わります。できるだけ前向きに、プラスに考えることで、人生が豊かになるのではないかと思っています」と心に響くメッセージをいただきました。「毎日稽古ができることが何よりも幸せ」という森下さん。これからも日々稽古に励み、舞台上から大きな愛と夢を届けてくれることでしょう。
森下洋子 1948年(昭和23年)、広島市に生まれる。3歳よりバレエを始め1971年(昭和46年)、松山バレエ団に入団、松山樹子に師事する。1974年(昭和49年)、ヴァルナ国際バレエコンクールに清水哲太郎とともに出場し、日本人初の金賞を受賞。日本で初めて国際的に活躍したプリマバレリーナとして「東洋の真珠」と称される。2021年、舞踊生活70周年を迎え現役で活躍中。 |
人々の心を潤す松山バレエ団の舞台芸術 |
MATSUYAMAが開く、バレエの扉 1948年の創立以来、「芸術は人々の幸せのためにある」という思いのもと、活動を続けている松山バレエ団。The Japan Balletとして、先人たちが芸術界に灯してきた燈を微力ながら担うため、さまざまな公演を行うとともに、バレエ教室で趣味のバレエの指導、次世代を担うアーティストの育成に努めています。 松山バレエ学校 青山本校 港区南青山3-10-16 TEL.03-3401-2548 http://www.matsuyama-ballet.com |
クリスマスの夜に繰り広げられる感動の物語 毎年多くの方々に感動をお届けしている「くるみ割り人形」を今年も上演します。心あたたまる舞台をぜひお楽しみください。 ◎2022 公演情報「くるみ割り人形」全幕 11/23(水・祝)フェスティバルホール(大阪)、12/11(日)東京文化会館 大ホール ■出演/森下洋子 松山バレエ団 ◎「くるみ割り人形」スペシャルバージョン 10/8(土) 北とぴあ さくらホール、10/10(月・祝) さいたま市文化センター、12/4(日) 府中の森芸術劇場こども ◎「くるみ割り人形」劇場 12/10(土) 東京文化会館 大ホール 〈チケットのお申込み・お問合せ〉TEL.03-3408-7939 松山バレエ団公演事務局(10時〜18時) |
更新日:2022年6月1日(水)