
藤田嗣治《猫の教室》1949年 軽井沢安東美術館
© Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 G3942
「猫」の絵から、絵画史をのぞく
浮世絵、日本画、現代アート……日本には魅力的な猫の絵がたくさんあります。そんな中で、独特の存在感を放っているのが、近代洋画の猫です。ツンとすましたおしゃれでモダンな猫、あえて朴訥に表した猫など、洋画家たちは多彩な猫の絵をえがいてきました。 しかし実は、洋画が生まれた当初、猫の絵はほとんどえがかれませんでした。また、洋画家たちが手本とした西洋の絵画にも、猫の絵は多くありません。絵の主役は人物という考え方が古くからある西洋には、そもそも動物の絵が少ないのです。 そんな猫というモチーフを、洋画の魅力的なテーマへと押し上げたのが藤田嗣治でした。1920年代のパリで、独特の下地に日本画の筆でえがいた「乳白色の裸婦」で脚光を浴びた時、裸婦の側にえがいたのが始まりです。さらに、まるで自分のサインのように自画像にえがき込んだりと、多くの個性が競い合うパリ画壇で、猫は藤田自身を印象付けるための欠かせないモチーフとなっていきました。 本展覧会では、パリの日本人画家「フジタ」がえがいた「裸婦の横の猫」を出発点に、日本の洋画家たちの猫の歴史を紹介します。藤田から直接の影響を受けた画家もいれば、そうでない画家もいます。しかし、どちらにも共通するのは、西洋とは違う日本の猫の絵の歴史も背負っていたということです。だからこそ、日本と西洋の伝統の間で悩んだり、猫というモチーフから新たな道を見出そうとしたのです。前史となる西洋絵画や日本画も含め、26人の作家、83点の作品で洋画の猫の歴史をたどります。
みどころ.1 | フジタの猫、傑作が大集合
乳白色の裸婦、少女、子ども、戦争画、そして宗教画……。長い画業の中で、実にさまざまなモチーフに取り組んだ藤田ですが、今も昔も、変わらぬ人気を誇るのが「猫」です。裸婦の横に猫をえがき込んだ初期の作品から、藤田の猫人気を物語る『猫の本』、戦時下の混沌を象徴する猫の乱闘、そして最後まで手元に残した一枚まで、藤田の「猫」の傑作で、その歴史をたどります。
みどころ.2 | 西洋と日本、「猫」の絵をめぐる歴史を探る
フジタが登場する以前、絵画において猫はどのように描かれていたのでしょうか? 本展では、「猫」の絵を通じて、「絵画の主役は人物」という芸術観から動物絵画の少なかった西洋と、人と動物は同じ心を持つという仏教の教えを背景に、動物絵画の宝庫であった日本を比較し、その奥にある動物観の違いを探ります。

菱田春草《黒猫》1910年 播磨屋本店
みどころ.3 | 「猫」から迫る、洋画家たちの魅力
フジタ以降、日本でも多くの洋画家たちが猫の絵を描くようになりました。洋画家・木村荘八が流行歌に着想を得てえがいたハイカラな猫の絵や、前衛画家・中原實の意外なほど愛くるしい子猫まで……。猫の絵の歴史を辿るとともに、猫の絵から見える洋画家たちの魅力に迫ります。

(左)木村荘八《猫恋人(ねこらばさん)》藤沢市(招き猫亭コレクション)
(右上)中原實《猫の子》1929年 東京都現代美術館
(右下)長谷川潾二郎 《猫と毛糸》 1930年 個人蔵
みどころ.4 | 猪熊の猫、傑作が大集合
フジタ以降の猫の絵に大きな展開をもたらしたのが、猪熊弦一郎です。猪熊は1950年代に集中して、猫の絵に取り組んでいます。本展では、最大級の油絵から、ユニークな猫がびっしりと描かれたスケッチブックの一葉まで、猪熊による猫の傑作15点が一堂に会します。

(左)猪熊弦一郎 《題名不明》 1986年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団
(右上)猪熊弦一郎 《猫によせる歌》 1952年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団
(右下)稲垣知雄 《子猫の散歩》 1975年 藤沢市(招き猫亭コレクション)
■展覧会名/フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫
■会期/9月20日(土)〜12月7日(日)
■休館日/毎週月曜日(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、
10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
■会場/府中市美術館 2階 企画展示室
■開館時間/10時~17時(最終入館時間16時30分)
■観覧料/一般 1,000円、高校生・大学生500円、小学生・中学生250円
※未就学児無料
※身体障害者手帳(ミライロID)等をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
※コレクション展も観覧可
※府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」で無料
※一部作品の展示替えあり
■主催/府中市美術館
■協力/青木屋
■問合せ/ハローダイヤル 050(5541)8600
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★申込み締切11/7(金)12:00まで
※当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
「フジタからはじまる猫の絵画史」特設サイト|府中市美術館 |
更新日:2025年10月22日(水)