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柳澤ゆり子『和のある暮らしを楽しむ』


vol.4《 新茶でもてなす 》
〜新茶を淹れて「おもてなし」しませんか〜

待ちに待った新茶を楽しむ季節がやってきます。
新茶についてちょっとだけ詳しくなって、おもてなしのシーンに新茶を用意してみませんか。

◆新茶とは
 その年の新芽を、一番最初に摘んで仕上げるお茶の事を「新茶」と呼んでいます。毎年、その年の気候などにより茶摘みの時期は異なるので市場に出回る時期も同じではありませんが、屋久島や種子島といった早い地域のものでは4月上旬頃から、続々と新茶がお茶屋さんの店頭に並び始めます。

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※季節のお花と美味しい和菓子も欠かせません


◆八十八夜
 八十八夜とは立春から数えて88日目(今年は5月2日)を指す雑節(註1)のひとつで、夏への準備を始める頃とされています。昔から、茶摘みだけでなく田植えや種まきの準備を始める目安となる頃とされて参りました。実際は茶摘みの時期は地域によってまちまちなのですが「夏も近づく八十八夜♪」という歌に茶摘みが歌われおり、茶摘みと言えば八十八夜とうイメージをお持ちの方が多いでしょう。 また、末広がりの8が重なるので縁起の良い日とも言われています。

(註1)二十四節気とは別に、農業に携わる事の多かった我々日本人の生活の中から生まれ、季節の移り変わりの目安とされてきた日のこと

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※写真は新茶の季節のものではありません


◆新茶の栄養
 新茶を飲むと長生きする、一年を無病息災で過ごせる、などといわれており新茶は不老長寿の縁起物とされてきました。先にも書きましたが新茶とはその年の一番茶の事で、前年の秋から冬の間に蓄えた栄養分やうまみ成分のテアニンなどが豊富に含まれているので理にかなっています。機械化が進んだ現代においても、新茶だけは手摘みする事が多いそうですから、丁寧に手摘みされ大切に我々の手元に届くのが新茶なのですね。「いつまでもお元気で」「長生きしてね」そんな願いを込めて母の日、父の日の贈り物にもお勧めです。

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※表面に浮いているキラキラしたものは埃ではなく毛茸(もうじ)、新芽独特の産毛です

 

◆旬を贈るということ
日本では、その年初めて収穫される「初物」には生気がみなぎっていると考えられ、それを食する事でエネルギーを取り込んできた為、新茶ももちろん最上級の贈り物と位置付けられます。普段お茶を飲まない若い世代の友も、新茶を贈るととても喜んでくれます。その時期だけの貴重な品を入手してお届けするという行為そのものが、素敵な贈り物に他なりません。

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◆家族・お客様を美味しい新茶でおもてなしする

せめて新茶の季節位は珈琲や紅茶をお休みし、美味しいお茶を淹れて、家族・大切な仲間達に振舞ってみて下さい。いつもよりきちんと茶葉や湯の量を測り、湯の温度を考え急須やお茶碗も温めて丁寧に。その場には季節のお花や美味しい和菓子も欠かせません。小ぶりの重箱に春らしいお菓子を詰めてピクニック気分を楽しむのも良いですね。

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◆おわりに

3月4月と変化の多い日々を過ごした方が多い事でしょう。縁起の良い初物「新茶」から大地の恵みを取り込む事で心身ともにリフレッシュし、明日への力が湧いてくる事間違いなしです。周りをもてなすだけでなく、自分自身の為に丁寧にお茶を淹れ、自らをおもてなしする時間も必要かも知れません。

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◎ P R O F I L E ◎

yanagisawa_pro.jpg歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子

パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。

季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。
京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家

更新日:2018年4月4日(水)