vol.7《 ひんやり甘い冷茶で涼をとる 》
〜ティータイムを心待ちに数時間前から仕込む楽しみ〜
●はじめに
お天気がはっきりしないと気分も晴れない・・・そんな梅雨の季節が明けたなら、さあ夏本番の始まりです。一昔前には想像できなかった程の暑い夏が今年もやってくるとなると、ついつい冷たい飲み物が欲しくなるものですが、身体を冷やすから控えているという方も少なくないのではないでしょうか。
そんな皆様にこの夏お勧めしたいのが「ごくごく飲む」のではなく、ひんやりスイーツを用意して楽しむ夏のティータイムに、数時間前から仕込んでおいた冷たくて美味しい冷茶を「ほんの数口頂く」、喉だけでなく心をも潤す楽しみ方です。
●先ずは緑茶の効能・効果について簡単にご紹介致します
あまりに身近すぎて無意識に摂取している緑茶ですが、実はとてもたくさんの栄養が含まれています。たとえば渋味の成分であるカテキン(タンニン)はポリフェノールの一種なので抗酸化・抗菌効果などがありますし、ビタミン類には、美肌効果(シミやソバカスの抑制)・動脈硬化予防・ストレス解消効果などがあります。苦味の元となるカフェインには、覚醒作用・利尿作用・新陳代謝促進作用の他、血液循環を促進したり疲労を回復させる効果もあるのです。又、うま味成分のテアニンには血圧上昇を抑制する効果まであるそうです。
この様に身体に良いこと尽くしの緑茶ですので暑い季節にも積極的に摂取したいところ。 そこで、ご提案させて頂くのが冷たい冷茶(緑茶)の楽しみ方です。
●少しだけ手間暇かけて「氷で淹れる」冷茶は甘味がたっぷり!
氷でじっくり淹れる冷茶は、時間はかかりますが甘みがたっぷりです。なぜかと言うと抽出の湯温が高いと渋みや苦みが強くなるのに対し、低い温度で淹れる事でうま味成分が多く抽出されるためです。玉露や高級煎茶がお勧めではありますが、入手が難しい場合には深蒸しタイプの煎茶を選ぶ事で短時間で緑色の鮮やかな冷茶ができあがります。
1. 通常の高い温度で淹れる際の2〜3倍のたっぷりの量の茶葉を使用します。
2. 茶葉が浸る程度の冷水を注ぎその上に氷をたっぷりのせ蓋をして2時間程待ちます。
(部屋の温度にもよりますのであくまでも目安です)
3. できあがりです!甘くて美味しい冷茶の味にびっくりするはずです。
●お急ぎの時には・・・
来客があるのに冷茶のセットをし忘れた!時間が無いがすぐに頂きたい!そんな時には濃いめに淹れた緑茶をたくさんの氷で急冷する方法もあります。すぐにできますので急ぐ際には便利ですし、高い温度で淹れるので香りも楽しむことができます。ただし、高い湯温で淹れますので氷でじっくり淹れた冷茶の様なトロリとした甘味は望めませんが、代わりにキリリとしたお味の冷茶を楽しむことができます。
●涼しげな器・小物で涼を演出
下記の写真では冷酒を頂く「ちろり」と冷酒用のガラスの「おちょこ」を使用しました。 お菓子は涼しさ感をUPさせるために大きなガラスのお皿に盛りつけ、遊び心で蟹の置物とスイカの団扇を、そしてテーブルには雪華紋の手ぬぐいを広げました。夏に雪?と思われるかも知れませんが着物の世界では夏に雪輪や雪華紋の着物を着用するのは粋とされておりますので、その考えを取り入れてみました。
●おわりに
ゴクゴク頂くお茶も美味しいですが、心に余裕のもてた日には少しだけ手間とひまをかけて準備をした冷茶を、ほんの少し頂きながら五感を研ぎ澄まして涼を感じてみる、そんな時間も良いものです。おもてなしの際にはワイングラスやシャンパングラスを使うのも楽しいですね。我々日本人は昔から涼をとるために「耳から」「目から」感じる涼を大切にして参りました。現代を生きる私達も「暑さを楽しんでみましょうか」それ位の気持ちを持てたなら、夏の暑さも「辛い」ではなく「幸い」に変えて乗りきれそうです。
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歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子
パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。
京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家
更新日:2018年7月4日(水)