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第46回 丹波布

第46回 丹波布

丹波布とは現在の兵庫県丹波市青垣地域で織られている手織り布です。もともとは江戸時代末期に始まった織物ですが、大正時代に衰退。昭和初めに復興しました。

きものコラム_第46回_丹波布_レディ東京

一度は伝統が途絶えるも柳宗悦氏らによって復興

丹波国佐治村で織られていたため、本来は佐治木綿、縞貫などと呼ばれていました。農閑期に女性達によって作られた手織り布で、ざっくりとした風合いが魅力です。もともとは野良着や普段着を作るために始まったようですが、京都などで布団や小袖を使われるようになり、明治の初期にたくさんの人が愛好するようになりました。しかし、大正時代に繊維の工業化とともに衰退し、一時その伝統は途絶えてしまいました。
昭和に入り民藝活動家・柳宗悦氏が京都の朝市で縞木綿を見つけ、工芸研究家の上村六郎に産地の特定を依頼したところ、それが佐治村で織られた佐治木綿であることがわかりました。その価値が見出され、昭和28年に上村の指導のもと再現が行われ、地元に保存会が発足するなどし、復興を遂げました。

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「つまみ糸」によって生まれるふっくらとした風合い

丹波布は手紡ぎの木綿糸を経糸緯糸に用いて織られますが、数本置きに緯糸に絹の「つまみ糸」を織り込むのが特徴です。つまみ糸とは出荷できないくず繭をつまみ出して膝の上で撚りをかけて糸にしたものです。つまみ糸の太さは均一ではなく、細いところや少し太い箇所があるので、緯糸に用いることで布にふっくらとした立体感を出すことができます。つまみ糸の入れ方で布の雰囲気が変わることも面白みの一つです。
丹波布は農作業の合間に主婦が紡いで、藍など身近にある草木で染め、織り上げられた日常生活から生まれた布です。柳宗悦はその温もり風合いを「静かな渋い布」と称したそうです。きものはもちろんのこと、ショールやバッグなどのファッション小物もたくさんあるので、装いにプラスしてみてはいかがでしょうか。
(レディ東京ライター/近藤洋子)


更新日:2024年10月23日(水)