■■ 第47回 備後絣 ■■
伊予絣、久留米絣と並んで日本三大絣に数えられる備後絣。広島県福山市芦田町・新市町で生産されている織物です。その伝統や技術は備後デニムにも引き継がれています。
■■ 日本三大絣の一つ
広島県東部の備後地方は、初代福山藩主が綿作を奨励したことにより、江戸時代から綿の産地として有名でした。江戸時代後期には福山市芦田町在住の富田久三郎がキシ縞と呼ばれる浅黄絣の絹織物を見たことをヒントに、縦糸の一部を竹の皮でくくって染め上げ、井桁絣を考案したのがルーツと言われています。明治時代に入ると備後絣は全国に流通し、多くの人々に親しまれていました。太平洋戦争中に製造が中断されましたが、昭和30年代には年間300万反以上を生産するなど国内の絣の約7割を占めるほどに。270もの織元があり、まちを歩くと「カシャン、カシャン」と機織の音が自然に聴こえてきたということです。
■■備後絣の技術を受け継ぐ備中備後エリアのデニム
もともと主に農作業などの作業着として着られていた備後絣は、手紡ぎ糸の厚みのある綿生地なので、とても丈夫で保温性にも優れています。さらに藍染めなので虫や蛇を寄せ付けない効果がありました。とても機能的な染織物ですが、洋装化によって需要は急減していきます。現在、織元は2社のみとなってしまいましたが、1992年(平成4年)には「広島県指定伝統的工芸品」に登録され、その伝統と技を守り続けています。さらにその技術は、デニム生産に受け継がれ、備中備後は日本最大のデニム生産地として国内外のファッションブランドから注目されています。
(レディ東京ライター/近藤洋子)
更新日:2024年12月4日(水)