1月3日(金)全国公開 シネマ歌舞伎「ぢいさんばあさん」

シネマ歌舞伎「ぢいさんばあさん」
仁左衛門、玉三郎ほか豪快キャストで贈る
森鴎外原作・宇野信夫作・演出の名舞台を大スクリーンで!

★作品について

「高瀬舟」「山椒大夫」等で知られる文豪 森鴎外の短編小説を基に、多くの歌舞伎狂言を残した劇作家 宇野信夫が作・演出し歌舞伎舞台化。原作に敬意を表しつつ、夫婦が再開する場面を加えるなど潤色し、舞台ならではの情感あふれる作品に仕上げています。
屈指の人気を誇る歌舞伎界のゴールデンコンビ片岡仁左衛門と坂東玉三郎が、伊織とるんの初々しい若夫婦時代と37年後の二人を、時にコミカルに、時に物悲しく演じ分け、時の流れをしみじみと描き出します。また、別離のきっかけとなる重要な役どころの下嶋甚右衛門を、共に歌舞伎の一時代を築いた二人の盟友 十八世中村勘三郎、るんの弟役 久右衛門を中村雁治郎(当時 翫雀)、その息子夫婦を中村芝翫(当時 橋之助)、片岡孝太郎が演じています。色褪せない、心に染みる名舞台がスクリーンによみがえります。

★あらすじ

江戸に住む美濃部伊織と妻るんは評判のおしどり夫婦。子供も産まれ幸せに暮らしていた矢先、伊織は喧嘩で負傷した義弟の久右衛門に代わり1年間京都で勤めをすることに。翌年の桜が咲く頃に再会を誓い別れる二人でしたが、伊織は京でふとした弾みから同輩の下嶋甚右衛門を斬ってしまい、越前にお預けの身となり江戸への帰参が叶わなくなってしまいます。月日は流れ、二人が離れ離れになってから37年。罪が許された伊織とるんはようやく再会の日を迎えます ———

★作品のポイント

おしどり夫婦の悲劇と絆明治期の文豪 森鴎外、昭和の黙阿弥 宇野信夫の共作による情感あふれる脚本

小説家としてだけでなく医学博士や官僚としても多くの実績を遺した森鴎外は、実は演劇界にもその多彩な才能の功績を残しています。明治維新による日本の近代化は演劇の分野にも及び、多くの文化人がこれに携わりました。鴎外は陸軍軍医として赴いた海外留学から帰国後文壇デビュー。小説やエッセイの執筆・西洋文学の翻訳に加えて西洋演劇の翻訳にも取り組み、日本演劇の近代化に大きな刺激を与えました。
一方で、幕末生まれの鴎外は江戸時代から続く「歌舞伎」にも精通していました。芝居好きの母と弟を持ち、特に弟の三木竹二(本名・森篤次郎)は歌舞伎好きで、開業医の傍ら劇評雑誌『歌舞伎』の編集と執筆を行い、歌舞伎飛翔の基準を確立した人物として知られています。幼い頃から歌舞伎に親しみ、西洋演劇の知識もあった鴎外は地震でもいくつかの戯曲を遺しました。但し、本作『ぢいさんばあさん』は戯曲ではなく短編小説として書かれたものです。この文学作品に注目し、歌舞伎舞台化したのは「昭和の黙阿弥」との呼び声も高い劇作家・宇野信夫でした。宇野はこの作品に出会ったときの感想を、自身の著書について振り返った著書で次のように書いています。
「これは原稿にしたら、十枚足らずのものであろうが、世にこんなロマンチックな小説があるだろうか、と思った。珠玉のような作品というのは、これをいうのだろうと思った。短い文章のうちに、人の世の哀れ、人間の美しさがこれ程滲み出ているものを、私はほかに知らない。「宇野信夫戯曲選集5(昭和35年、青蛙房)より」
簡潔で洗練された原作小説に心打たれた宇野は、舞台作品として効果的な潤色を過不足なく加えて歌舞伎舞台化しました。昭和26年7月に初演以来70年以上歌舞伎ファンに愛される演目となり、現在も繰り返し上演されています。歌舞伎に親しみ、日本の演劇をより豊かなものにしようと取り組んだ森鴎外の文学作品が、後年劇作家・宇野信夫によって長年愛される歌舞伎作品に生まれ変わったのです。
原作との違いはいくつかありますが、特筆すべきは仲睦まじい夫婦がある事件をきっかけに離れ離れになった後、37年ぶりに再開する場面。これは原作小説にはなく、宇野が書き加えた場面です。初々しい若夫婦と年老いてからの夫婦を同じ俳優が演じ分けることで、時の流れの残酷さと夫婦の固い絆を視覚的に表現した舞台ならではの名場面となっています。

★見どころ

伊織とるん、仁左衛門と玉三郎。名優による演技が見どころ。

片岡仁左衛門と坂東玉三郎は、共に重要無形文化財保持者(人間国宝)であり、芸と華を兼ね備えた現代歌舞伎界屈指の名優です。1970年頃から新橋演舞場で行われていた「花形歌舞伎」への出演等をきっかけに注目を集め、スラリとした現代的なスタイルと美しさから“孝玉コンビ”と呼ばれ一大旋風を巻き起こしました。(当時の仁左衛門の芸名は片岡孝夫)
二人はさまざまな歌舞伎狂言で共演し、本作『ぢいさんばあさん』も共演を重ねた数多くの演目のひとつです。平成6年(1994年)3月歌舞伎座公演で初めて伊織役・るん役で出演して以来、令和6年5月までに、同配役で5度共演しています。
この役は、若い夫婦と37年後の姿の演じ分けはもちろん、劇中では描かれない37年間の別離を観客に想像させなくてはならない難しい役どころ。この期間に夫婦が乗り越えた苦労を観客が想像してこそ、遂に果たされる再会の場面に感動が生まれるからです。

★シネマ歌舞伎とは

歌舞伎の舞台公演を撮影し、映画館での大スクリーンで楽しむ新しい観劇空間です。鮮やかな映像で俳優の息遣いや衣装の細やかな刺繍まで見ることができ、生の舞台とはまた異なる魅力があります。こだわり抜いて制作したサウンドは、映画館のダイナミックな音響でMまるで生の劇場で観劇しているかのような臨場感を立体的に再現。歌舞伎の持つ本来の面白さ、美しさ、そして心打つ感動の場面の数々がわかりやすく、身近に感じられます。
お正月のひととき、大スクリーンで歌舞伎を鑑賞するのもいいですね。

シネマ歌舞伎『ぢいさんばあさん』

■公開/2025年1月3日(金)
■場所/東劇・新宿ピカデリーほかにて全国公開
■料金/一般2,200円、学生・小児 1,500円
※お得なムビチケカード販売中 1,900円
■問合せ/各上映映画館、歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、南座ほかにて販売
【公式HP】https://shochiku.co.jp/cinemakabuki/

更新日:2024年11月8日(金)

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