きもの

第8回 竺仙のゆかた


花火大会や夏祭りといえば、若い女の子はこぞってゆかたを着ます。普段と違う女性らしさをボーイフレンドにアピールしたり、友だち同士で盛り上がったり、女の子たちは実に生き生きと楽しそうです。でも大人の女性はどうでしょう。ゆかたを着る機会は意外と少ないのではないでしょうか。大人が涼しげにゆかたを着る姿は素敵なものです。今までゆかたと縁がなかった方も、この夏はぜひ大人のゆかたに挑戦してみませんか。

■ 第8回 竺仙のゆかた ■

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創業天保13年(1842年)、ゆかたといえば「竺仙」というほど有名な日本橋の老舗です。創業当時から現在に至るまで、企画・生産・販売を一貫して行い、江戸染ゆかたの独特の技術を活かし、ゆかたから江戸小紋へと世間に名を馳せ、歌舞伎の世界にも登場したという竺仙。時代を超えた奥行きの深さ、伝統的でありながら洗練された豊富な柄が、多くのファンを引きつける魅力です。「ゆかたも今や夏きもの」という5代目当主の言葉にもあるように、和服というだけで注目されるこの頃。まずは素敵なゆかたを選ぶことから始めてはいかがでしょうか。

竺仙の魅力は染めの種類の豊富さ

kimono_08_b2.jpg(左)大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯
(右)店主おすすめの新作・奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯

ひと口にゆかたといっても生地の種類や染め方により様々。竺仙のゆかたアイテムは、コーマ白地、地染・コーマローケツ・コーマ玉むし・紬ゆかた・綿芭蕉玉むし・紅梅小紋・奥州小紋・縮小紋中形・絽小紋中形・絹紅梅小紋・麻小紋・絽長板・縮長板等50アイテム、約1000柄にも上ります。染め方は、長板中形、注染、引き染、先染、ローケツ染、しごき染、まぼろしの染めといわれるリバーシブルの染色法があり、それぞれの特徴を活かした魅力的な柄が染められます。

大人が着るから素敵なゆかた
上の写真は紫陽花を染め上げた奥州小紋。大人の女性の魅力を引き出す1枚です。原案である竺仙の紫陽花の柄を日本画家・宮下真理子氏にアレンジし描いてもらったという創作柄。細かいタッチで葉脈まで丁寧に描かれていて優しい雰囲気が魅力です。またグッと大人っぽい下の2点は、大胆な柄が目を惹く竺仙紬ゆかた「万寿菊の柄」と麻織八寸帯(左)と、紫陽花と同じく宮下真理子氏による奥州小紋「松の柄」と麻兵児帯。こんなゆかたを纏ったら気持ちもグッと上がりそうですね。

ゆかたで過ごす夏の宵
長引くコロナ禍で、夜のお出かけが少なくなった今、自宅で食事をする人が増えています。必然的に家飲みも増えますね。そんな夫婦の時間をたまには2人揃ってゆかたで過ごしてみてはいかがでしょうか。居ながらにしてお出かけ気分が味わえるし、普段と違う姿にお互いを惚れ直すかも。ゆかたはそんな新鮮さを運んでくれます。(文/レディ東京編集者 中島有里子)

《 今月のワンポイント:パナマ 》

kimono_08_c.jpg夏の素材というのは清々しくていいものです。着物でいえば、麻が肌に触れた時のひんやりした感触は気持ちいいし、綿紅梅、絹紅梅も爽やかです。夏の着物を粋に決めたいなら、足元はパナマ。パナマ帽と同じパナマで、原料は中米産のヤシに似た多年草。さらっとした履き心地は最高です。ただし、こちらはあくまでお洒落用。紬と同じく高価でもカジュアルなので、履いていく場所は選びます。

 

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更新日:2021年6月2日(水)