■■ 第26回 与那国織 ■■
沖縄本島から南西へ510km、日本最西端に位置し、国境の島として知られる与那国島。その与那国島で織られ続けているのが「与那国織」です。与那国島は古くは琉球王国の支配下になく独立国だったために、独自の文化が残っているのも特徴です。
与那国織の歴史は他の沖縄の織染物と同じく古く、朝鮮の史書には1479年には既に与那国島で機織りがなされていたと記されています。そして、琉球王国支配下となった16世紀には与那国織は献上品として使用されていたようです。
■■日本最西端の島で織られ続ける与那国織
与那国織は織りの技法により、花織物の「与那国花織」、縞織物の「与那国ドゥタティ」、紋織物の「与那国シダディ」、絣織物の「与那国カガンヌブー」の4つに分類されます。。
首里織の種類
●与那国花織
昔は役人のみが着ることを許された与那国花織。格子柄に花模様が織り出される直線的な幾何学模様が特徴です。柄によってダチン(八つ花)、イチチン(五つ花)、ドゥチン(四つ花)と呼ばれます。
●与那国ドゥタティ
昔は島民の日常着として、今でも島の行事などで着用されています。「ドゥーチ」とは与那国島の方言で4つを意味します。与那国ドゥタティは4枚の布を合わせて作られることから、ドゥ(4枚)タティ(仕立て)と呼ばれています。木綿と麻に似た苧麻(ちょま)や麻で織られ、袖は筒袖で短く、丈はひざ下ほどに仕立てられ、涼しさと動きやすさが配慮されています。白・黒・紺のギンガムチェックがとても粋でお洒落です。
●与那国シダディ
シダディとは手ぬぐいのことです。白地の布に7色の綿糸を織り込んだ与那国独自のものです。昔は家族や恋人に旅の安全を願って織られていたとされています。今では祭事の際に男性は腰に下げて、女性は頭に巻いて使用されています。さらに、米寿を終えて亡くなった人の葬儀に用いられるなど、暮らしに根付いてる織物です。
●与那国カガンヌブー
カガンは鏡を意味し、ブーは紐のことです。カガンヌブーは細帯のことですが、夫婦を表すミトゥダ絣の模様があるのが特徴。少し離れて寄り添っている絣柄に夫婦の姿を模しています。与那国カガンヌブーは主にドゥタティと合わせて使用されます。
■■与那国織のきものはスリーシーズン楽しめるのが魅力
与那国織はデザインから染色、織りまで1人で全て行います。
染料は島に自生している植物が中心です。黄色が出る「フクギ」、茶色が出る「車輪梅」、ベージュや黒が出る「アカメガシワ」、インド藍などが主な染料です。きものとして使用されることが多いのは「与那国花織」です。優しい色合いと上質な質感が大人の女性の魅力を引き立てます。裏地付きの袷としても着用できますが、裏地に遊び糸がないので、裏地のない単衣としても着用できます。
与那国ドゥタティは麻のシャリ感や涼感を残しながら、木綿と比べるとつるりとした質感です。主に夏のきものというイメージかもしれませんが、夏はちろんのこと、春や秋にも単衣で楽しめます。半幅帯でカジュアルに、名古屋帯でシックにまとめることもできます。
与那国織のきものは友人との食事会などカジュアルなシーンで楽しめるのが魅力です。大人の女性のお洒落な普段着として取り入れてみるのはいかがでしょうか。
(レディ東京ライター/近藤洋子)
更新日:2022年12月16日(金)