■■ 第28回 加賀友禅 ■■
日本を代表する染色法として知られる“友禅”。その中でも今回は石川県の“加賀友禅”についてご紹介します。
■■落ち着きある優美さが魅力。加賀友禅の特徴
“友禅”は江戸時代の扇絵師・宮崎友禅斎が染色に自分の画風を応用したことから始まったとされています。お察しの通り“友禅”の名称も宮崎友禅斎が由来となっています。
友禅染めの特徴は染色の際、色が混ざらないように糊を用いることです。糸目糊と呼ばれる糸のように細い線で糊を置いていくことで、細かい柄を表現できるようになっています。友禅で繊細な絵画のような模様を描くことができるのは、この糊のおかげです。柄は季節の草花や花鳥風月など自然をモチーフにしたものが特徴です。
特徴1 写実的な草花模様
加賀友禅の模様は自然や古典をモチーフにした絵画調の絵柄が特徴です。特に写実的な草花模様がよく描かれています。
特徴2 落ち着いた色彩の秘密は加賀五彩
京友禅と異なり、加賀友禅は落ち着いた色調であることも特徴の一つです。その落ち着いた色調の所以となっているのが、「加賀五彩」と呼ばれる基本色です。
藍(あい)、臙脂(えんじ)、黄土(おうど)、草(くさ)、古代紫(こだいむらさき)の五色を基調としています。
特徴3 外ぼかし
模様を写実的に見せる技法として用いられているのが「ぼかし」です。京友禅でもぼかしを用いることもありますが、加賀友禅と手法も異なります。京友禅のぼかしは内側から外側に向かってぼかしを入れますが、加賀友禅は反対に外側を濃く、内側に向かってぼかしを入れます。(外ぼかしとも言われます)外ぼかしの技法によって、立体感のある写実性の高い絵柄が生み出されます。
特徴4 虫喰い
加賀友禅では植物の葉が虫に食べられている様も表現しています。虫が食べたように葉に小さな斑点を彩色し、自然描写をよりリアルに表現しています。
■■職人の熟練の技が活かされる加賀友禅の工程
・図案
紙に模様を描きデザインを作成します。
・下絵
生地に下絵を描きます。
・糊置き
色が混ざったり滲むのを防ぐために、糊を細かく生地に置いていきます。
・彩色
加賀五彩を基調にして、彩色します。
・中埋め(糊伏せ)
模様全体を糊で塗り覆います。次の地染めで彩色した模様に地色が入るのを防ぎます。
・地染め
模様以外の生地に地色を染めます。むらが無いよう染め上げる熟練の技が必要な作業です。
・蒸し
蒸すことで染色を定着させます。
・水洗い
いわゆる「友禅流し」です。流水で糊や余分な染料を洗い流します。
・仕上げ
乾燥、湯のし、顔料等で仕上げ加賀友禅が完成します。
写実的な絵画のような繊細な美しさが特徴の加賀友禅。武家文化が息づく金沢で育ってきた独自の優美さに心惹かれます。2023年秋には第38回国民文化祭が石川県で開催されます。今年は石川県の多様な文化芸術の一つ加賀友禅に触れてみるのはいかがでしょうか。
(レディ東京ライター/近藤洋子)
更新日:2023年2月17日(金)