きもの

第34回 久米島紬


■ 第34回 久米島紬 ■

日本の紬のルーツと言われている「久米島紬」。沖縄本島から西に100kmほどに位置する久米島を中心とする久米島町で生産されている織物です。歴史が古いだけでなく、今もなお高級品として知られるきもの好きにとって憧れの逸品です。

レディ東京_きものコラム34

日本の紬のルーツ、久米島紬の歴史

その昔、琉球と中国の交易寄港地だった久米島は地の利もあって、古くより大陸から養蚕のや絹織物の技術がもたらされました。琉球王朝時代には、紬は貢納布として納められるようになりますが、薩摩藩の支配下になると質の向上が厳しく求められるようになりました。これにより久米島紬の品質はより向上し、洗練された「琉球紬」として江戸で知られる存在となりました。明治時代からは貢納布ではなく生産品として作られ続けましたが戦争や恐慌といった社会情勢により、一時生産数は激減してしまいます。しかし1950年頃から復興の取り組みを行い、2004年には国の重要無形文化財に指定されました。

レディ東京_きものコラム34

すべて1人の手仕事によって創り上げられる久米島紬

図案から染料作り、絣くくり、糸染め、織りまでの全ての工程を一人が一貫して行うのが久米島紬の特徴。作り手の個性が垣間見られるのも魅力の一つです。
糸は紬糸か引き糸が使用されます。紬糸とは、繭から生糸にできないクズ繭を真綿の状態にして、手紡ぎした糸のこと。引き糸とは、繭から手で生糸を引き出したものです。人の手で撚る紬糸は太さが均一でないため、生地を織り上げた時も凹凸があり、独特の温かみが感じられます。そして染料は島の植物や泥から抽出された天然染料。基本の色は5色で、焦茶・レンガ色・黄色・灰色・うぐいす色です。糸を染料に浸けて干すという作業を数十回も繰り返し、糸に色をつけていきます。久米島紬の代表する柄が絣模様ですが、琉球王朝時代から伝わる図案集、「御絵図帳」をもとにデザインされます。模様の数は80種類以上もあり、動植物や生活道具などがモチーフになっています。そして、久米島紬のツヤと柔らかな風合いは、木槌で1〜2時間ほど叩く砧打ちによって生み出されます。

レディ東京_きものコラム34

古の技術と知恵が今も生かされ、すべて手作業で行われる久米島紬。その歴史や工程を知れば知るほど、手仕事への尊敬の念を抱かずにはいられません。
(レディ東京ライター/近藤洋子)

写真提供:沖縄県 商工労働部 ものづくり振興課


更新日:2023年8月16日(水)