きもの

第33回 八重山上布


■ 第33回 八重山上布 ■

夏の織りと言えば上布。先月は沖縄の『宮古上布』を紹介しました。今回は石垣島をはじめとする八重山諸島で織られている『八重山上布』を紹介します。

見た目にも清涼感漂う“白上布”

沖縄本島からさらに南西に400〜500kmにある島々で構成される八重山諸島。今もなお豊かな自然が残る八重山諸島に伝わるのが、『八重山上布』です。『宮古上布』が琉球藍で染められた“藍上布”なのに対して『八重山上布』と言えば白地に薄い絣模様が入る“白上布”が有名です。八重山諸島では古くから苧麻を使用した織物がありましたが、琉球王国時代には王府の御用布として用いられ、1609年に琉球が薩摩藩の支配下になったことで人頭税が課せられるようになり、八重山上布は宮古上布と同じように貢反布となりました。

『八重山上布』ならではの海晒し

『八重山上布』はまず苧麻から糸を作ります。染料はほとんどが八重山に自生する植物、紅露(クール)やフクギ、ヒルギ(マングローブ)、相思樹(ソウシジュ)、インド藍などです。なかでも八重山上布特有の染料となっているのがヤマイモ科の植物、紅露(クール)です。紅露(クール)の中身は真っ赤で擦りおろしたもので染色していきます。そして染色が終わった糸は丁寧に織り上げられます。


織り上がった反物は1週間天日干しにされます。スコールが多い八重山諸島ですから、天日干しの作業も一苦労なのだそう。そして無事に天日干しが終わった反物は最後に海晒しが行われます。八重山諸島の透き通るような海水で『八重山上布』が海晒しされる光景はなんとも情緒深いものです。

かつてはそのほとんどが紅露(クール)の絣だった『八重山上布』ですが、今では色とりどりの染料で染め上げた色上布もあり、色彩も豊か。通気性、吸湿性に優れた麻織物の『八重山上布』でワンランク上のきものライフを楽しんでみませんか。
(レディ東京ライター/近藤洋子)

写真提供:沖縄県 商工労働部 ものづくり振興課


更新日:2023年7月19日(水)