きもの

第17回 季節を纏う

■ 第17回 季節を纏う ■


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きものならではの楽しみ方

きものの魅力の1つは、季節をそのまま纏える面白さだと思います。サクラの季節には、春色のきものにサクラの柄の帯を締めて、自分もサクラになったような感覚を味わい、秋には金茶のきものや帯でイチョウ並木の風景に溶け込むといった感じに。また洋服ときものでは、着る気分や選ぶ色柄がまったく変わってしまうのも不思議です。私は洋服ではピンクを着ることはありませんが、きものでは写真のような色を身につけたくなります。洋服だと何となく気恥ずかしくて敬遠してしまう花柄も、きものなら着ることができるのです。

とはいえ、はじめからそうだったわけではなく、色物を着ることに慣れていなかった最初の頃は、普段着ているモノトーンの洋服の延長線上の渋い無地が安心でした。きものは面積が大きいので、華やかな色は気恥ずかしかったのです。それに関東人の私はそもそもが渋好みなので、それがカッコ良く思えたということもあります。ところが、きものに慣れてくると、不思議と色柄ものが着たくなるのですね。それは、染織の技術の極みが柄の中にあるのがわかってきて、その良さを感じるようになるからです。最初の頃は民藝っぽくて着にくいと思っていた久米島紬や黄八丈も今では大好きですし、結城紬も複雑な柄に魅力を感じるようになりました。

羽織問題

 

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 私はお茶を習っていないので、ルールに縛られずに気ままにきものを楽しんでいます。そのため、本当に寒い時期に着るコートは持っていますが、羽織を持っていなくて、春先や秋口には大判のカシミヤのショールを羽織っていました。もうずっと前から羽織を作らなくてはと思ってはいたのです。でも、帯つきで出かけられる季節しか着ていなかったこともあり、ついつい後回しになっていました。ところが、最近きもの仲間ができて集まる機会が増えました。そんな中、彼女たちときもの談義をしていると、やはり1枚は羽織を持っていないと不便という話になり、この機会に羽織を買おうと思いました。またタイミング良く、素敵な羽織紐も見つけてしまったのです。羽織紐といっても紐ではなく、象牙とオニキスのビーズや水牛の角でできたアールヌーボーの雰囲気の作家もの。これに合う羽織を探さなくては。

ある集まりにきもので出席することが決まっているので、今から反物を選んで仕立てる時間はありません。そんな時に友人が教えてくれた「洗える長はおり」。既製品で安価ですが、柄が江戸小紋というのが気に入りました。何種類かの柄がありましたが、私は白地に黒の毛万筋を選びました。見た目はダークグレーになりますので、これならあの羽織紐にも合いそうです。間に合わせですが、結構使えそうです。先日合った友人が、白黒の大きな市松柄の羽織を着ていました。古いきものを仕立て直したものということで、裏はやはり古いきものからとった華やかな赤い柄でとても素敵でした。いつか好みに合う反物を見つけたら、ちゃんと仕立てたいものです。
(文/レディ東京編集者 中島有里子)

 

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更新日:2022年3月2日(水)