きもの

第29回 西陣織と博多織


■ 第29回 西陣織と博多織 ■

帯は地厚でなければならず、特殊な技法が必要となるため限られた地域のみで作られてきました。帯の三大産地と言えば、京都府の西陣、群馬県の桐生、福岡県の博多が有名です。今回はその中から、西陣織の帯と博多帯を紹介します。

華やかな西陣織

西陣織とは京都の先染めの織物の総称、日本を代表する絹織物です。西陣織の特徴はなんといっても、豪華さと華やかさ。さまざまな色合いの文様や金箔・銀箔を用いたものなど、きものの装いを一段と華やかにしてくれます。西陣織の歴史は古く5〜6世紀頃、豪族・秦氏が養蚕と織物をはじめたことに始まります。1976年に国の伝統工芸品に12種の西陣織が指定されました。

西陣織の伝統工芸品12種

• 綴(つづれ)
• 経錦(たてにしき)
• 緯錦(ぬきにしき)
• 緞子(どんす)
• 朱珍(しゅちん)
• 紹巴(しょうは)
• 風通(ふうつう)
• 綟り織(もじりおり)
• 本しぼ織り(ほんしぼおり)
• ビロード
• 絣織(かすりおり)
• 紬(つむぎ)

いずれも着色された色とりどりの絹糸で織り込んで作ります。特に綴(つづれ)は熟練の職人でも1日で数センチほどしか織ることができません。
西陣織は帯、着物として用いられることはもちろん、他にも能衣装、神官衣装、インテリア製品などが生産されています。

献上品としても愛された博多織

博多織とは博多を中心に生産される絹織物の総称です。古くはきものも多く作られていましたが、今は帯地が中心となっています。博多帯は「一度締めたら緩んでこない」というのが、最大の魅力。そのためか昔は重い刀を差しても大丈夫ということで武士の帯として用いられていました。また、帯を締めるたびに「キュッキュッ」と音が鳴りますが、これを絹鳴りと呼びます。この絹鳴りがしてこそ職人は一人前とも言われます。

国の伝統工芸品に9種の博多織が指定されています。

• 献上・変り献上
• 平博多(ひらはかた)
• 間道(かんどう)
• 総浮(そううけ)
• 綟り織(もじりおり)
• 重ね織
• 絵緯博多(えぬきはかた)
• 着尺
• 袴地

「献上・変り献」とは、江戸時代に黒田藩が仏具の模様を織った反物や帯を幕府に献上したことからこの名がついたと言われています。
献上柄は意味が込められた4つ柄があります。

家内安全の「親子縞」
子孫繁栄の「孝行縞」
煩悩を打ち破る「独鈷」
仏の供養のための花の器「華皿」

このように永遠の親子の愛情が込められた柄だからこそ、江戸時代の殿様にも愛され、今もなお、多くの人に愛されているのではないでしょうか。

今回は西陣織の帯と博多帯について紹介しましたが、帯の選び方できものの着こなしは無限大に広がります。あなたもお気に入りの帯を見つけて、着こなし上手を目指してみませんか。
(レディ東京ライター/近藤洋子)


更新日:2023年3月17日(金)