きもの

第32回 宮古上布


■ 第32回 宮古上布 ■

沖縄本島から南西にはるか約300km、観光地としても人気の宮古島。そんな宮古島にはきものを愛する人から「いつか袖を通してみたい」と言われる麻織物の『宮古上布』があります。今回は憧れのきもの『宮古上布』について紹介します。

レディ東京_きものコラム_宮古上布

日本三大上布の一つ、宮古上布

宮古上布は宮古島で作られている織物で越後上布、近江上布と並び日本の三大上布と呼ばれています。宮古上布は500年以上前から織られていましたが、16世紀に琉球王国に献上された「綾錆布」が始まりとされています。その後、1609年に琉球が薩摩の支配下になったことで1637年には人頭税が課せられるようになり、女性は宮古上布を納めることが義務付けられました。貢反布となった宮古上布は役人の厳しい管理のもと、織られるようになり、安定した技術が発達し、精度の高い美しい上布が織られるようになりました。人頭税は島民にとって大変負担の大きいものでしたが、明治後期に廃止されると宮古上布は自由に生産と販売ができるようになったということです。

憧れの宮古上布は時間と手間がかかる手仕事の逸品

宮古上布は、麻の中でも苧麻(別名:からむし)で織られます。苧麻は天然繊維のなかでも吸湿性・速乾性が高く機能性に優れた素材です。そのため暑くても肌に密着せずサラッとしているので涼しく着ることができます。
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苧麻から採った手積みの糸は繰り返し琉球藍で染め重ねられ、深い紺色の糸へと生まれ変わります。

そして、麻織物ながら独特の光沢がとても美しいのも大きな魅力。ロウを塗ったような独特の光沢は仕上げに行われる「砧打ち」によるものです。織り上がった布を木製のハンマーで隅から隅までまんべんなく叩くことで、美しい光沢が生まれます。

生地が薄く、軽く、透け感があることからトンボの羽にも例えられてきた宮古上布。1日数センチしか織ることができない手仕事の逸品です。きものとなるとお値段も張りますが、バッグや財布、アクセサリーなどの小物もあるので、日々のお洒落に取り入れてみてはいかがでしょうか。手仕事の逸品を身につけると自然と心が踊るものです。


(レディ東京ライター/近藤洋子)
写真提供:沖縄県 商工労働部 ものづくり振興課


更新日:2023年6月21日(水)