きもの

第38回 銘仙(伊勢崎・秩父・足利など)


■ 第38回 銘仙(伊勢崎・秩父・足利など) ■

アンティークの着物ショップに行くと、よく目にする銘仙。レトロな雰囲気が魅力的なきもので、大正時代から昭和時代にかけて流行し、女性の普段着として着られていました。今はお洒落なアンティークきものとして注目され、幅広い世代から愛されています。

女学生を中心に流行した銘仙

銘仙は絣(かすり)の技法で織られますが、経糸と緯糸の色をわざとずらしながら織っていくことで、まるで滲んだような優しい風合いが生まれます。もともと銘仙は養蚕農家の織子がくず糸を用いて自分のきものを織ったことに始まります。くず糸を使っていたことから、軽くて安価なのが特徴。そのため、織子だけでなく次第に庶民の間で人気となりました。しかし、友禅などと比べると質素だったことから、女学生にとっては少し物足りなかったようです。そこで誕生したのが色が鮮明で柄も入った「ほぐし絣」という技法です。「ほぐし絣」は群馬県の伊勢崎で誕生しましたが、埼玉県の秩父や栃木県の足利でも織られるようになり、大正時代から昭和初期にかけて女学生を中心に全国的に流行しました。

銘仙の5大産地

かつては日本全国のさまざまな地域で銘仙が織られていましたが、今ではほぼ足利・桐生・伊勢崎・秩父・八王子の5大産地で生産されています。今回はその中から3つの産地の特徴をご紹介します。

●伊勢崎銘仙
先染めの平織り絹織物。伊勢崎絣とも呼ばれ、伝統的工芸品に指定されています。「併用絣」という技法で、多彩な色が使用され、鮮やかな柄が表現されているのが魅力です。
●秩父銘仙
「ほぐし織り」「ほぐし捺染」と呼ばれる技法が用いられます。玉虫色の光沢があるのも特徴で伝統的工芸品に指定されています。
●足利銘仙
もともと織物の産地であったことから、合理的な生産体制を確立。大量生産を可能にし、昭和初期には生産高日本一の銘仙の産地となりました。

銘仙はカジュアルなきもので、普段着として着用するのが正しい楽しみ方です。格としては紬よりも下になるため、フォーマルな席に着ていくことはできませんが、友達との会食やお出かけなどに着れば、お洒落度がワンランクアップすること間違いないでしょう。

(レディ東京ライター/近藤洋子)


更新日:2023年12月21日(木)