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第39回 能登上布


■ 第39回 能登上布 ■

この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。レディ東京ではきものコラム第28回で「加賀友禅」の魅力をお伝えしましたが、被災地の復興を願って、石川県が誇る伝統の麻織物「能登上布」を紹介したいと思います。

五大上布の一つ、能登上布

夏の着物の代表格とも言える「上布」は上等な麻織物のことで、能登上布は五大上布の一つに数えられています。能登上布の起源は今から約2000年前まで遡り、第10代崇神天皇の皇女が能登の鹿西(ろくせい)町に滞在したときに、上布の作り方を土地の人に教えたことに始まります。その後、技術が向上し、明治時代には皇室への献上品となり、最盛期の昭和初期には120軒以上の織元があり、昭和35年には石川県無形文化財の指定を受けました。しかし戦後、和装から洋装が主流になるなど、ライフスタイルの変化により、能登上布は徐々に衰退の道を辿ります。現在唯一の能登上布織元となっている山崎麻織物工房は伝統の技を守り続け、次世代に繋げようと尽力しています。

夏きものに最適な軽やかさと透け感

能登上布といえば、蝉の羽のような軽さや透け感が最大の魅力。糸質もよく、肌触りもサラリとしていて、夏に着たい着物の代表格です。色合いは日常生活に溶け込むような落ち着いた色が多く、シックでモダンな印象がとてもお洒落です。また、細やかな十字が組み合わさった繊細な絣模様も大きな魅力。その模様は見た目にも涼感を与えてくれます。
能登上布は素材としては高級品になりますが、自宅で洗うこともでき、手入れがしやすいのも嬉しいポイント。洗うたびに、柔らかな風合いになり、経年変化を楽しみながら長い年月愛用することができます。
きものはもちろんのこと、スカーフやストールなどの小物も作られていますので、まずは手始めに小物から手に取るのもよいかもしれません。日常の中に能登上布のような上質な手仕事を取り入れると、凛とした気持ちになれそうです。

(レディ東京ライター/近藤洋子)
写真提供:能登上布唯一の織元 (株)山崎麻織物工房


更新日:2024年1月26日(金)