■■ 第25回 首里織 ■■
沖縄には16品目もの国が指定している伝統工芸品がありますが、そのうちの13品目が染織物が占めています。東南アジアや中国、日本との交易で織りの技術が伝わり、県内各地に染織物は受け継がれていきました。なかでも500年にもわたる琉球王府の首都であった首里の織物は、貴族や士族の衣装として格式高い優美な織物が織り継がれました。それが「首里織」です。
■■王族のみが着た花倉織など、格調高い織物が織り継がれる
首里織(しゅりおり)は、沖縄県那覇市で織られる織物の総称です。かつて首里の女性たちは王妃や王族までもが織りを嗜んでいたというほど、織物が盛んで独自に発展を遂げました。なかでも、王族のみが着用した「首里花倉織」と王族・貴族のみが着用した「首里道屯織」は首里だけで織られた特別な織物で、気品ある独特の美しさが魅力となっています。そんな首里織ですが明治時代、王府が廃止されると衰退し始め、第二次世界大戦後には消滅の危機を迎えます。しかし、宮平初子さん(人間国宝)たちの努力により、復興。現在、大きく分けて5つの織りが伝えられています。
首里織の種類
●首里花倉織
沖縄の織物の中で最も格式高い織物。王族が着た夏衣。花織と絽織、紗織を市松模様と菱形模様、あるいは前後、左右交互に織る。
●首里道屯織
男物官衣として使用された織物。平織地に部分的に糸の密度を高くして織る。両面使用できるのが特徴。
●首里花織
氏族以上が着衣した織物。両面浮花織、緯浮花織、手花織、経浮花織の四種類の紋織のこと。
●首里絣
首里特有の手結の技法「巾小結(ハバグヮーユイ)」で織られる。絣の原型とも言われている。
●首里ミンサー
「ミン」は中国語で「綿」、「サー」は「狭」を意味する「綿狭帯」のことです。
■■和装用の反物から生活雑貨までバラエティ豊か
始まり、染色、糸操り、製織り、洗い張りなど全てで15工程。その工程を分業せずに1人で行います。糸は絹糸が中心ですが、木綿糸、麻糸、芭蕉糸などを使用。染料は染料は福木、琉球藍、テカチ、シブキ等の植物染料をメインに化学染料を用います。織物というと和装用の反物や帯などをイメージする人も多いと思いますが、今ではネクタイなどの小物やインテリア雑貨など、幅広い製品が作られています。これは伝統を受け継ぎながら、現代の感覚を取り入れて、手軽に首里織を楽しんで欲しいという思いが込められています。
琉球王府の首都・首里で育まれた伝統的な織物を、身に纏ったり、普段の暮らしに取り入れてみるのも粋なはからいかもしれません。
(レディ東京ライター/近藤洋子)
更新日:2022年11月16日(水)